INTERVIEW

平尾成志
盆栽師

JANUARY 31, 2018

MASASHI HIRAO

まるで現代アートのようなインスピレーション溢れる作品はもちろん、バンドやDJとコラボレーションした盆栽パフォーマンスでも人気を呼んでいる盆栽師・平尾成志さん。革命児を育てたのは、かつてマッカーサーに盆栽を紹介し、海外への盆栽普及活動に尽力した故・加藤三郎氏。師の遺志を継ぎ、日本の“BONSAI”を伝えるために海を渡る。

新たなミッションを求めて
次なる旅路へ

平尾さんを盆栽の世界へ導いたのは、京都・東福寺にある重森三玲氏の「方丈庭園」。苦悩を抱えながら大学で陸上に打ち込んでいた平尾青年は、方丈庭園に触れたとき、精神が“庭”の世界へトリップし、自分の悩みをすべて忘れるほど神経が研ぎ澄まされる体験をしたという。

「形式を重んじながらも、遊びを取り入れられる世界に進みたい」という思いから、盆栽界の巨匠・加藤三郎氏に弟子入り。5年間修行して専属管理師に就任し、加藤氏が他界した翌年の2009年に盆栽技師としてスペインへ渡った。
「自分の成長のための努力はしていたけど、この業界の行く末に対しては何も行動していない自分が嫌でした。盆栽は、その国の文化背景が木にあらわれてくる。とても面白いです」

しかし、数カ国でデモンストレーションを経験した際、平尾さんはある違和感を覚える。「当時30歳くらいだったのですが、自分の親世代の方々が『マスター!』って握手やサインを求めてきて。日本から来た若手盆栽師っていうだけで評価されて、肝心の盆栽が軽視されている気がしたんです」

それからは、現地の人に頼りきるのではなく、自分でオーガナイズをするスタンスに切り替えた。ショーの一週間前に現地へ入り、たった一人で盆栽園を回って素材を集める。人から用意された木ではなく、自分の目で選んだ木に責任を持ってハサミを入れるのだ。

2016年5月にオープンした、さいたま市西区にある平尾さんの「成勝園」。園内にはおしゃれなカフェもあり、イベントやワークショップを通して盆栽とヒトをつないでいる。園に着くと、メキシコ人と韓国人のお弟子さんが爽やかに迎えてくれた。「今の日本で、盆栽で生きて行こうと決心する人は少ない。日本人が文化の継承に疎い分、同じマインドを持った弟子が海外へ出て行って、ファッションやアートの舞台に盆栽がもっと顔を出すようになってくれたら」

立体的な造形であるという観点から、奥行きを重視しているという平尾さん。「3Dのアートだから、どういう風に手前と奥の差を出して奥行きを作っていくかを意識しています。後ろに月が光っていたらきれいだろうなとか、盆栽が置かれる状況をイメージしながらね。でも、盆栽パフォーマンスは体力的に40歳が限界。東京オリンピックの開会式に、集大成として挑戦したいですね」

音楽とのコラボレーションも、自身が抱いた違和感がきっかけだった。
「盆栽デモンストレーションって、すごい細かい作業を4時間とかかけてやるんです。でも、一般の方はそんな長い時間見ていられない。だったら、4時間かけてやっていたものを、30分に凝縮してやろうって思ったんです。そして、長い時間を楽しんでもらうため、音楽の力を借りることにしました。もちろんクオリティは落とせないので、心技体がクタクタになるんですけどね」

イタリア・ミラノでトライしたこの試みに手応えを感じた平尾さんは、「空間を使ってどう楽しませるか」を突き詰め、これまでの“デモンストレーション”を土壌に“パフォーマンス”というスタイルを確立。その場で生まれる作品は、予想もつかない姿になることが多いと語る。
「自分のイメージは50%くらい。残りは音楽とお客さんの臨場感でどんどん変わっていく。一人でやると想像できる範囲でしか作れないけど、パフォーマンスはそれを超える。僕としても楽しいですね」

文化庁文化交流使として4カ月で世界11カ国を歴訪、ブータン王室に作品寄贈など、輝かしい経歴を持つ平尾さん。最後に、これまでで一番手応えのあった仕事を聞いてみた。
「これは!……という仕事はまだないですね。勉強になったことはたくさんあるけど、満足して帰れたことは一度もない。疑問や改善点が湧いてきて、帰りの機内にはクリアしたい課題ができてしまっているんです」

現状に満足することなく、新たなミッションを見つけるために、次なる国へ飛んでいく。平尾さんの旅は終わらない。

学生時代に初めて買ったカメラがCASIO「EXILIM」だったという平尾さん。国内と違い、海外には動画撮影班もいないため、自分一人で渡航してパフォーマンスの様子を押さえられる「FR100」は重宝する。

平尾成志
/ 盆栽師

1981年生まれ、徳島県三好市池田町出身。京都産業大学を卒業後、日本文化の継承を志し、さいたま市盆栽町にある加藤蔓青園に弟子入り。師である故加藤三郎氏の言葉「盆栽を国内外問わずいろんな人に伝えられる人間になってくれ」を胸に、海外へ活動の幅を広げる。平成25年度文化庁文化交流使として4カ月で世界11カ国を周り、日本固有の文化である盆栽の美意識を伝える。2016年5月に自身の盆栽園となる「成勝園」をさいたま市にオープン。