FEATURE

僕らが旅に出る理由
- 挑戦する旅 前編 -

NOVEMBER 30, 2017

RIDING SOUTH
feat. MASAAKI MITA & JACKY

自転車ほど旅に最適な乗り物はない。 頬に当たる風、移りゆく景色、放浪の歓喜、自由! そして見知らぬ土地を旅するとき、その快楽はいっそう増す。

今回、ワンダラーは初めての海外バイクトリップ・ストーリーの舞台に台湾を選んだ。 グルメやエキゾチックな文化が観光客にも人気の台湾だが、 実は「環島」と呼ばれる島を一周するバイクトリップが非常に盛んな国でもある。 北の台北から最南端の墾丁まで、いくつもの峠を越え、雨と風にまみれ、 たくさんの人と出会いながら台湾を縦断した5日間の旅。
そこでワンダラーが見たものとは。

台湾がバイクトリップに
最適な国なわけ

「初めての海外自転車旅」

僕が旅に出た理由は、だいたい100個くらいあって、ひとつ目はどうしても海外でバイクトリップをしたかったからだ。 行き先について夢は膨らむ。アメリカのどこまでも続くジープロードをバイクパッキングするか、スペインの巡礼路を自転車で回るか、ヒマラヤをMTBで駆け抜けるか? 考えただけで血湧き肉踊る! が、問題は時間だ。こちとら、しがないフリーランス。旅にうつつを抜かせば抜かすほど収入は減るし、クライアントは怒るし、奥さんは鬼になる。旅に当てられる時間はせいぜい1週間+α。その期間でワクワクするバイクトリップができる国はどこなんだ!?

そういえば、何年か前に友人が台湾をバイクトリップしていたことを思い出した。早速調べてみると、台湾では島一周の自転車旅が「環島」と呼ばれちょっとしたブームになっているらしい。標識も整備されサービスステーションも充実し、政府観光局発行のガイドブックまである力の入れようだとか。だが、「環島」には少なくとも10日必要だという。うーん。休んじゃうか?

そのとき稲妻のようにアイデアが閃いた。ならば台湾の最北にある台北から最南端の墾丁まで台湾を縦断してみたらどうだろう? 台湾縦断バイクトリップ! 亜熱帯の海辺をひた走り、一路南を目指す。走り疲れたら飲茶屋で一休みして、台湾小姐ちゃんたちとカンペーし、ほろ苦い檳榔を噛み砕く…決まりだ!

目的地が決まったら、あとは仲間だ。どうせ旅をするなら気の置けない仲間と一緒がいい。バイクトリップに造詣が深く、この酔狂な旅にふたつ返事で乗ってくれる男。アウトドアメーカーで縫い子(「クラフトマン」と本人は言い張っているが)をしつつ、何故か某アウトドア雑誌で連載を持つあの男。ギアと女の子について話し始めると止まらないその男、「ジャッキー」こと尾崎光輝にメッセージを送ると、5分と間をおかず「行く!」と返信が来た。やはりふたつ返事だった。

到着当日、夜の台北を走る。台北は夜遅くまで交通量が多く、まさに眠らない街だった。

- DAY1 台北~宜蘭 -
自分の力で旅をしている実感。
自転車にしかできない旅。

「いきなりの峠道」

朝8時、クルマとバイクが組んづ解れつで先を急ぐ台北の路上を、荷物を満載した自転車で漕ぎ出した。右も左もわからないくせにここから最南端まで縦断しようだなんて随分思い上がりだけど、気分は最高に盛り上がっていた。万歳! 俺は自由だ! この自転車と荷物一式があれば、どこにだって行ける!

初日は台北から九湾十八拐と呼ばれる約60‌km続く峠道を越えるいきなりの難所で、30分も走るともう峠道が始まった。斜度はそれほどでもないが、とにかく暑い! 交通量も多く、心も体もフワフワしてペダルに力が入らない。一息ついて延々と続く峠道をまた登り始める。

台北から離れると交通量も体調も落ち着いてきた。景色はすっかり「山」になり、ジャッキーは自転車に付けたスピーカーからクラシックロックを流しながら、「アメリカみたい!」とはしゃいでいる。ここ台湾だけどな。
昼に谷間の集落に着き、手近な食堂で台湾名物魯肉飯を食す。女将さんはまったく中国語を理解できない怪しい日本人相手に上機嫌で話し続け、帰りに飴までくれた。
午後になると雲が厚くなり、遂に土砂降りの雨が降り出した。木立が深い場所を探して雨宿りをし、また走っては雨宿りを繰り返しながら、午後4時、遂に峠の最高点に着いた。

九湾十八拐の峠を攻めるジャッキー。台北から自転車でわずか1時間で深い山の中に来れることに驚く。九湾十八拐は距離は60kmと長いものの、斜度はそれほどでもないので地道に漕ぎ続ければ越えられる。補給と食事は中間地点にある坪林の集落で可能。

ペダルを漕ぎ続けて辿り着いた
ご褒美みたいな景色。

雨上がり、どこまでも続く峠の下り道はキラキラと輝いていた。一斉に鳴き始めた虫たちの声を聞きながら、下り道を猛スピードで駆け下りた。峠の上からは海と薄紫色に染まる街の景色が見渡せ、「まるでご褒美みたいな眺めだな」とジャッキーが言った。
一気に峠を下りて久しぶりに街に出ると、台北とは打って変わった南国ムードの街並みが広がり、こんな場所まで自分の足で来れたことが信じられなかった。クルマなら数時間で来れる距離。でも、クルマではこんな感慨を絶対に味わえなかっただろう。

夕方6時にその日の目的地の宜蘭に着き、手近な安宿に泊まった。体はボロボロだったけど、心は充実感で一杯だった。その日やったことといえば、自転車を漕いでいただけなのに!

台湾バイクトリップ挑戦に不可欠なギア

❶「台湾一周サイクリングガイド」
台湾の観光局が発行している環島ガイドブックで、PDF版をダウンロードすることもできる。モデルコースや簡易的な地図はもちろん、道の高低表が掲載されているので非常に助かる。

❷「自転車」
環島ルートは道路がよく整備されているため、自転車はMTBよりもロードバイクやシクロクロスがオススメ。キャンプ道具を持たず着替えを最小限にすれば、環島は小さなリュックひとつでも可能だ。

❸「スマホ&ポケットワイファイ」
今回の旅で役に立ったものといえばこれに尽きる。地図アプリで目的地までの距離を検索し、宿や食堂も探せるのだからまさに必需品。ルーターは空港などで1日500円ほどで借りれる。バッテリーも忘れずに。

❹「メリノウールシャツ」
天然の抗菌防臭効果があるので5日間のライド中ずっと着続けても匂わなかったし、濡れてもすぐ乾き、濡れたまま自転車に乗っても冷えにくい。荷物を減らしたいバイクトリップには最適。

❺「FR100」
写真を撮ることが疎かになりがちな自転車の旅。だが、FR100ならば記録はバッチリ。自転車やヘルメットに取り付けておけば写真を自動的に撮り続けてくれるのでライドに集中できる。

❻「バイク用バッグ」
リュックひとつでも可能な環島だが、やはり長距離のライドでは自転車に取り付けるバイク用バッグが欲しくなる。パニアバッグでもフレームバッグでもよいが、くれぐれも荷物は最小限にすること。

三田正明
/ ライター フォトグラファー

旅好きが高じて山好きに。国内外の山域をハイクしつつ、撮影、ライティング、編集など独自の目線で横断的な活動を行っている。9月にローンチするULアウトドアメーカー山と道のオウンドウェブメディアではメインエディターとライターを務める。