FEATURE

僕らが旅に出る理由
- 挑戦する旅 中編 -

JANUARY 31, 2018

RIDING SOUTH
feat. MASAAKI MITA & JACKY

自転車ほど旅に最適な乗り物はない。 頬に当たる風、移りゆく景色、放浪の歓喜、自由! そして見知らぬ土地を旅するとき、その快楽はいっそう増す。

今回、ワンダラーは初めての海外バイクトリップ・ストーリーの舞台に台湾を選んだ。 グルメやエキゾチックな文化が観光客にも人気の台湾だが、 実は「環島」と呼ばれる島を一周するバイクトリップが非常に盛んな国でもある。 北の台北から最南端の墾丁まで、いくつもの峠を越え、雨と風にまみれ、 たくさんの人と出会いながら台湾を縦断した5日間の旅。
そこでワンダラーが見たものとは。

- DAY2 宜蘭~花連 -
大雨で道路が崩落して電車移動。
こんな日もある。

「優しい台湾人」

2日目はその日走る予定だった宜蘭から花連までのルートでは記録的な大雨により道の崩落が起こっており、電車での移動を余儀なくされた。台湾の在来線は輪行袋に入れなくとも自転車を載せることができると聞いていたが、宜蘭の駅に行くと自転車を載せられる電車は午後の2時40分までないと言われ、待っていてもしょうがないので20‌km先の蘇澳まで走ることにした。

ところが、10‌kmほど行った羅東の街で食べた小籠包に盛大に舌鼓を打っていると、大雨になった。30分経っても1時間経っても一向に止まず、見かねた小籠包屋のおじさんが、例によってペラペラと猛烈な勢いの中国語で話しながらゴミ袋をくれた。どうやらこれで荷物を養生しろということらしい。防水対策はしているから遠慮すると、どうしても持って行けという。

それからも台湾を旅している間、何度となく台湾の人の優しさに触れた。僕もいつか日本で困っている見知らぬ外国人を見かけたら親切をしようと誓う。ズブ濡れになりながら羅東の駅から電車に乗り、夕方に花連に着いた。

「自転車に優しい台湾の列車」
台湾の在来線は輪行袋に入れなくとも列車に自転車を載せられる。環島ルートは在来線と並行している場所も多いので、トラブル時は列車でエスケープすることも可能。

「超充実!台湾食堂事情」
外食文化の台湾は食堂が超充実。しかもどこも大抵おいしい。休憩がてら町の食堂でつまむ小籠包は最高。

「台湾の宿事情」
小さな街でもシャワーも冷房もフリーwifiもある部屋がツインで一泊1200元(約4300円)で泊まれる。僕たちもキャンプ道具は持って行ったが、結局使わずに毎晩宿で泊まった。

「どうする?輪行バッグ」
頭を悩ませるのが旅中の輪行バッグの保管先。空港で預けることもできるが、結構高額。台北でそれなりのグレードのホテルに泊まれば、預かってもらえる場合もある。予約時に確認してみよう。

- DAY3 花連~富里 -
宿りとライダーズハイ。
道はどこまでも続く。

「最南端への不安」

3日目ともなると、右も左もわからなかった僕たちにもある程度台湾の道路事情とスケール感が掴めてきた。と、同時に、5日間で最南端の墾丁までたどり着けるかが少し不安になってきた。5日間ではギリギリたどり着けないのではないか?

別にどうしても最南端に行かなくてはいけないわけではまったくないし、そこに何もないのもわかっている。ただ、この旅が中途半端な旅になるのが怖かった。もしも辿り着けなくても、最後まで全力を尽くして、自分で自分にOKと言えるような旅にしたかった。

花連からはなだらかにアップダウンする一本道が続いた。別に飛ばすつもりはさらさらないのに、いつの間にかライダーズハイ。ただひたすら道路と自転車と自分の体に意識を集中して、トランス状態でペダルを漕ぐ。ランニングでハイ状態になるにはある程度の練習が必要だけど、自転車は誰でも味わえるのだから、こんなにハイな乗り物はない。

花連から台東まで続く花東縱谷は、台湾でも有数の景勝地。台湾原住民が多く住む地域でもあり、どこまでも続く水田や果樹園や茶畑の景色は台湾の原風景と言ってもいいだろう。道もなだらかで走りやすく、街から街、道から道へとダイナミックに移動できるので、バイクトリップの醍醐味を味わえるセクション。

その日も天気は降ったり止んだりを繰り返した。僕たちは雨宿りとハイを繰り返しながら長い距離を走り、午後4時半、計画段階でその日の目的地にしていた玉里に着いた。コンビニのイートインスペースで一息つき、スマートフォンの地図アプリでこの先の地理を確認しながら作戦会議をする。

日が暮れるまでまだ2時間あるけれど、体は疲れていたし、今すぐシャワーを浴びたい気持ちだった。また雨が降るかもしれないし、この先の街に宿があるかもわからない。でも、ここに留まったら最南端までは行けないかもしれない。行こうぜ。キャンプ道具もあるし、なんとかなるさ。

体と心に鞭打ちまた走り始めた。幸い玉里からは廃線を再利用したサイクリングロードがあり、快調に進めた。1時間ほどで隣町に着いてまた作戦会議。ここまで来たらもっと行こうとジャッキーが言った。たぶん自分ひとりなら、ここで諦めていただろう。

暗くなりかけた田園地帯をひた走り、街の光が見えたときは感激した。この日は結局110‌km移動した。

夏至の日に太陽が天頂を通る(つまり夏至の日に赤道直下になる)エリア、北回帰線を越える。写真は瑞穂にある北回帰線標誌公園にあるオブジェ。どうりで台湾、暑いわけである。

台湾バイクトリップにおいて、スマホ&wifiルーターに続いて助かるのが各地にあるコンビニの存在。日本のセブンイレブンとファミリーマートが熾烈な出店競争をしており、かなり小さな町にもコンビニがある。品揃えは日本のコンビニとほとんど同じ(おでんやおにぎりもある!)だし、ほぼ必ず冷房のきいたイートインコーナーもあるので非常に助かる(自転車の空気入れがある店も!)。長い道のりを越え街に着き、コンビニを見つけた時の嬉しさといったらない。旅の間、一体何軒のコンビニにお世話になっただろうか…。

三田正明
/ ライター フォトグラファー

旅好きが高じて山好きに。国内外の山域をハイクしつつ、撮影、ライティング、編集など独自の目線で横断的な活動を行っている。9月にローンチするULアウトドアメーカー山と道のオウンドウェブメディアではメインエディターとライターを務める。